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『中医学』 ちょっと難しい東洋医学の考え方 肝
2025-05-26おすすめ
加世田 KASEDA
中医学における「肝(かん)」は、西洋医学でいう肝臓とは少し異なる、より広範な概念を指します。単なる臓器としての機能だけでなく、自律神経系や精神情動、血液の貯蔵・調節など、多岐にわたる働きを持つと考えられています。
中医学における「肝」の主な働き
1. 疏泄(そせつ)を主る:
o 全身の気(生命エネルギー)、血(血液)、津液(体内の水分)の流れをスムーズに保つ働きです。
o 精神情動を安定させ、自律神経系のバランスを調整します。
o 消化吸収を助け、胆汁の分泌を促進します。
o この機能が失調すると、気の滞り(気滞)、血の滞り(瘀血)、精神的な不安定、消化不良、月経不順などが起こりやすくなります。
2. 蔵血(ぞうけつ)を主る:
o 血液を貯蔵し、必要に応じて全身に供給・分配する働きです。
o 運動時や精神活動時には血液を末端に送り、安静時には肝臓に戻して貯蔵します。
o この機能が失調すると、めまい、ふらつき、視力低下、筋肉の痙攣やしびれ、月経不順などが起こりやすくなります。
3. 筋(きん)を主る:
o 筋肉や腱などの運動器系を栄養し、その機能を維持する働きです。
o 肝の血が十分に供給されることで、筋肉は正常に収縮・弛緩し、関節の動きも滑らかになります。
o 肝の血が不足すると、筋力の低下、関節の動きが悪くなる、手足のしびれなどが起こることがあります。
4. 目に開竅(かいきょう)する:
o 肝の状態は目に現れると考えられています。
o 肝の血が豊富であれば、目は潤い、視力も正常に保たれます。
o 肝の血が不足すると、目の乾燥、視力低下、目がかすむなどの症状が現れることがあります。
5. 華は爪にあり:
o 爪は肝の健康状態を反映すると考えられています。
o 肝の血が充実していれば、爪は滑らかでつやがあり、丈夫です。
o 肝の血が不足すると、爪はもろく、割れやすくなったり、色が悪くなったりすることがあります。
6. 情志(感情)は怒:
o 怒りの感情は肝と深く関連すると考えられています。
o 過度な怒りやストレスは肝の気の流れを滞らせ、肝の機能を失調させる原因となります。
o 逆に、肝の機能が失調すると、イライラしやすくなったり、怒りっぽくなったりすることがあります。
肝と他の臓腑との関係
中医学では、五臓(肝・心・脾・肺・腎)は互いに影響し合い、バランスを取り合って身体の機能を維持していると考えます。肝は特に以下のような臓腑と密接な関係があります。
• 胆(たん): 肝と胆は表裏の関係にあり、互いに協力して消化吸収を助け、精神情動を安定させる働きをします。
• 腎(じん): 腎は肝を滋養する働きがあり、肝の血の貯蔵を助けます。
• 心(しん): 肝は血を貯蔵することで心を安定させる働きがあります。
• 脾(ひ): 肝は脾の消化吸収機能を助ける一方で、脾の機能が亢進すると肝を抑制することもあります。
• 肺(はい): 肝の気の流れは肺の呼吸を助けると考えられています。
肝の不調と養生
ストレスは肝の機能を阻害する大きな原因となります。そのため、中医学では、精神的な安定を保ち、ストレスを適切に解消することが肝の健康にとって非常に重要だと考えられています。
また、食生活では、酸味のあるものや、気を巡らせる働きのある食材(ミント、菊花、柑橘類など)が肝の健康に良いとされています。
このように、中医学における「肝」は、単なる臓器の枠を超えた、身体全体の機能や精神活動に深く関わる重要な概念です。肝のバランスが崩れると、様々な心身の不調につながると考えられています。
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